トライアンフで現象を示す際のカードの向きはしばしば議論の的になる。そこで、この件についての自分の考えを好き勝手に書いてみる(異論はあると思うが…)。候補は次の 2 つ。
- 裏向きのカードの中で観客のカードだけが表向きになる
- 表向きのカードの中で観客のカードだけが裏向きになる
結論から言うと、自分は候補 1 の「裏向きの中に表」の方が良いと思う。
2 つの候補について、それぞれの利点・欠点を比較すると次のようになる。
1. 裏の中に表 | 2. 表の中に裏 | |
---|---|---|
現象数 | 1 | 2 |
瞬間最大効果 | 大 | 小 |
見た目 | 👍 | 👎 |
混乱 | 👎 | 👍 |
トライアンフは、「全てのカードの向きが揃う」・「観客のカードを当てる」という 2 つの現象を含む。候補 1 ではこの 2 つの現象が同時に起こるため、現象数は 1 つである。一方、候補 2 では 2 つの現象が段階的に起こるため、現象数は 2 つである。また、候補 1 では 2 つの現象を 1 つの瞬間に集約するため、(適切にプレゼンテーションすれば)トリックの瞬間最大効果は候補 2 よりも大きくなると考えられる。現象数と瞬間最大効果の比較ではトレードオフ的な部分もあり、どちらが良いかを決めることは難しい。個人的には瞬間最大効果が大きい候補 1 が好みだが、これだけでは決め手に欠ける。
見た目は候補 1 の方が良いだろう。裏向きのカードの中で観客のカード 1 枚だけが表向きになり、そのインデックスが見えている状態が美しい。
「混乱」は、候補 1 が批判される主な理由だ。候補 1 では 2 つの現象が同時に起こるため、観客を混乱させてしまうというものだ。「観客を混乱させない」という点で候補 2 が優れているように思える。
まとめると、候補 1 は見た目は良いが観客を混乱させる可能性があり、候補 2 は見た目は良くないが観客を混乱させない。現象数と瞬間最大効果はどっちもどっち。この時点ではどちらが良いかはっきりしない。そこで、それぞれの弱点を解消できないかを考えてみる。
候補 2 の見た目の悪さを解消するのは前提が崩れるため不可能。では、候補 1 の「混乱」という弱点は解消できるだろうか?
これは、できると思う。
そもそも、トライアンフの 2 つの現象を同時に起こしたからと言って本当に観客が混乱するだろうか、という疑問もあるが、仮に混乱するとしても解決策はある。以下、2 つの解決策を示す。
- デックを広げる前に現象を説明する(例:「指を鳴らすと、全てのカードが裏向きに揃います。そして、あなたのカードだけが表向きになります」)
- 最初にデック上部のみを広げ裏向きに揃っていることを示してから、全体を広げ、観客のカードだけが表向きになっていることを示す
このようにすることで、候補 1 でも観客の混乱を回避できる。
さらに、「デックを広げる前に現象を説明する」方法の場合、観客の期待を高めた状態で現象を起こす(例:指を鳴らす)ことができる。もちろん、意外性のために事前に現象を説明しない方が良いケースもあるが、原則、事前に現象を説明した方が観客の期待を高めることができ、効果的だと思う(事前に現象を説明しにくいのは、単にタネをバレにくくするための、マジシャンの都合である場合が多い)。
これらを踏まえ 2 つの候補を再比較してみる。
1. 裏の中に表 | 2. 表の中に裏 | |
---|---|---|
現象数 | 1 | 2 |
瞬間最大効果 | 大 | 小 |
見た目 | 👍 | 👎 |
混乱 | 👍 | 👍 |
期待 | 👍 | 👎 |
以上より、トライアンフでは「裏の中に表」で現象を示す方が効果的だと思う。
参考
[1] 佐藤総『トランプと悪知恵』.
[2] Dani DaOrtiz. Reloaded. (video).