Blufflog

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2019 年映画ベスト

2019 年に観た初見の映画の本数は 100 本。その内、2019 年日本公開の新作は 22 本(先行上映を含む)。
ここでは新作ベスト 6 と、新旧合わせた初見ベスト 10 を記録しておく。
新作は昨年同様あまり観ていないので特に良かった作品ベスト 6 まで。

2019 年新作ベスト 6

  1. ゴーストランドの惨劇
  2. CLIMAX クライマックス
  3. ハウス・ジャック・ビルト
  4. ミッドサマー
  5. ファースト・マン
  6. カニバ/パリ人肉事件38年目の真実

2019 年初見ベスト 10

  1. キング・オブ・コメディ
  2. ゴーストランドの惨劇
  3. 愛のむきだし
  4. CLIMAX クライマックス
  5. ハウス・ジャック・ビルト
  6. ソーシャル・ネットワーク
  7. ポゼッション
  8. 蜘蛛の瞳
  9. おまえうまそうだな
  10. 来る

Cardstalt

先日、日本語版が発売された Roberto Giobbi の『Card College Lightest』をざっと眺めていたところ、Cardstalt というトリックが目に止まり非常に面白かったので紹介する。


現象

Cardstalt

観客にデックから同じバリューの 4 枚のカードを抜き出してもらいます。マジシャンは抜き出されたカードが何かは知りませんが、残りのデックを 1 度だけ素早くリフルし、そしてそこにない 4 枚のカードのバリューが何かを正確に言い当ててしまいます。

Cardstalt Plus

シャッフルされたデックから観客の 1 人がカードを 1 枚抜き出し、それを裏向きのまま脇に置きます。“Cardstalt” のプレゼンテーションからの流れで、マジシャンはデック全体を通して一度素早く見て、そして足りないカードが何であるかを言い当てます。

※ 現象はこちらから引用


Cardstalt に使われている原理は自分は全く知らなかったし、恐らくほとんどのマジシャンが知らないであろうもので、この原理が非常に奇妙で面白い。この原理は数理的なものではない上に他のタネが一切存在しないため、スライト・数理的原理の気配を完全に消したピュアなマジックが演じられる。また、原理を知れば分かるが、必然的に演技臭も消すことができる。
自分は Benjamin Earl の Intuitive Poker II や Max Maven の Roundabout のようなトリックは好物なので、必然的にこのトリックも大好き。
ちなみにこのトリックは Moris Seidenstein (Moe) が演じていたものらしいが、『Moe's Miracles』を読んだ限りではいかにも、といった感じ。この本はとても面白かったが、Giobbi が引用している『Moe and His Miracles with Cards』は恐らく別物なのでこちらも読みたいと思っている。が、入手手段が分からず困っている。

Cardstalt Plus は Cardstalt に続けて演じることが想定されたトリック。こちらは Cardstalt とは異なりマジシャンの誰もが知るような地に足の付いた基礎技法を用いて同種の現象を起こすわけだが、Cardstalt の原理と補完的になっており、それぞれのトリックの強度が上がっている点が構成として良い。また、トリックの終盤に組み込まれたあるサトルティが、シンプルかつ簡単ながら強い説得力を持っており、この点も素晴らしい。

個人的にスライト・数理的原理の気配が嫌なのは勿論、ミスディレクション臭・演技臭・サッカートリック臭なども苦手なのだが、これら 2 つのトリックはそういった要素を限りなくゼロに近付けられる点が良い。
また、記憶術系のトリックは驚異的な記憶力によって現象を達成しているというプレゼンテーションのため、観客にタネを訊かれて困る、ということが無い点が便利だったりもする。とってもお勧め。

『Card College Lightest』日本語版はこちらで購入できます。

地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い』(Sion Sono. Why Don't You Play in Hell?. Japan: 2013.)を観た。

これは自分が偉大な表現を生み出すためには全てを犠牲にしても構わないという非常に自己中心的な狂人の話で、この思想・価値観が響くかどうかで好みが分かれそう。ちなみに自分はとても好き。『セッション』・『ハウス・ジャック・ビルト』・『風立ちぬ』などが似た系譜だと思うが、やはりこれらも好き。少し毛色は異なるが、サドの『悪徳の栄え』における主人公ジュリエットを始めとする「悪人」たちも非常に自己中心的なのでとても好き。

ゴーストランドの惨劇

今更ながらパスカル・ロジェ監督の『ゴーストランドの惨劇1 について。

非常に大好きな映画です。
以下ネタバレありの感想。ネタバレ要素が本作の本質ではないとは思うが一応(例えば『ファイト・クラブ』も所謂ネタバレ要素はあるが、そこが作品の本質ではないのと同様)。

本作は主に次の 2 点で良かった。

1 点目は、単純にホラー映画というエンタメとして超楽しいという点。

本作の一番のベースはトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』だろう。悪役のでかい方はレザーフェイスの変形。他だと気味の悪い人形やケレン味ダリオ・アルジェント風。しつこいまでのジャンプスケアの多用に代表されるようにホラー映画のベタな手法のオンパレードが逆に潔く、諸々のやりすぎ感と相まって非常に楽しい。姉妹映画としても尊い。91 分という適度な尺。最高。

2 点目は、想像・創作に対する肯定が感じられる点。

本作の主人公ベスはパスカル・ロジェ監督の投影 2。ホラーの世界に無限の想像力を広げるベスは、想像の世界に逃げ込むことで残酷な現実を生き延びる。しかしそれは現実から目を背け逃げているだけ。それでも最後に現実に立ち向かう力を与えたのも想像の力によるもの。

ベスが対峙する過酷な現実は映画の外の(リアルな)現実のメタファー。制限なきホラーと想像力で残酷な現実に対峙する心意気が嬉しい。ベスがホラー小説を書く理由を訊かれて「正気を保つため」と答えるが、この言葉が全てを表している。

Bluffbox

Bluffbox というマジックのレパートリーなどを管理できる Web サイトを作ったので公開します。

https://bluffbox.haru52.com/

マジックのレパートリーを管理していないと、自分がどんなマジックができるのかが分からなくなりがちです(少なくとも自分は)。また、演技時間やテーブルの有無などの状況に応じたルーティンを組むのも面倒です。
紙の手帳・EvernoteExcel などでレパートリー管理をしている場合も、これらはレパートリー管理に最適化されたツールではないため何かと不便です。

そこで、マジックのレパートリー管理に最適化したサイト Bluffbox を作りました。Bluffbox ではトリック・ルーティン単位でレパートリーを柔軟に管理できます。もちろん、スマホでも PC でも利用可能です。
Bluffbox ではトリック・ルーティンに加え、以下の情報を管理できます。

  • 製品(e.g., 書籍、レクチャービデオ、マジックグッズ)
  • YouTube 動画
  • マジシャン

また、これらの情報を相互に関連付けることもできます。
さらに、記事の投稿・コメント、ユーザのフォローといった SNS 機能もあります。

全機能を無料でお使いいただけるので是非お試しください!
(情報を見るだけなら会員登録は不要ですが、情報の登録・編集には会員登録が必要です)

なお、サイトの不具合や脆弱性を見付けられた方はこちらからご連絡いただけると助かります。ご意見・ご質問もどうぞ。

追記

『初めてのJavaScript 第3版』を読んだ

オライリーの『初めてのJavaScript 第3版』1 を読んだ。

JavaScript をよく分かっていなかったので、ECMAScript 2015 (ES6) を一通り体系的に学べて良かった。

JavaScript 本だとオライリーのサイ本こと『JavaScript 第6版』が有名だが、ES6 非対応なので、同じくオライリーで ES6 対応の『初めてのJavaScript 第3版』を読んだ。

以下、簡単にメモ。

  • 全てはオブジェクト(キー・バリュー)
  • メソッド:オブジェクトのプロパティとして指定される関数
  • class 構文によりクラスベースの OOP が可能
    • 内部的にはプロトタイプベース(プロトタイプチェーン)だが、コードを書く際はクラスベースのつもりで書けば良い
    • class 構文は関数によるクラス定義のシンタックスシュガー
  • 非同期処理は新しい順に async/await (ES7) → ジェネレータ (ES6) → Promise (ES6) → コールバック
    • コールバックで複雑な非同期処理を実装するとコールバック地獄に
    • 新しい構文により複雑な非同期処理をシンプルに書ける
    • async/await が使える環境ならこれを使うのがベスト(?)
    • ジェネレータは直感的に分かりにくい
  • 'use strict'; でエラーチェックが厳しくなり good
  • typeof null === 'object'
  • メソッドの function: を省略可(ショートハンド)
const taro = {
  name: 'Taro Yamada',
  greet() { console.log('Hello!') }  // greet: function() { console.log('Hello!') } と同じ
}
  • アロー関数(ラムダ式的なやつ)は this を束縛しない(語彙的に束縛する)
'use strict';

this.val = 'global';

const fGlobalDef = function() { console.log(this.val); };  // this は呼び出し元オブジェクト(e.g., obj1, obj2)
const ArrowFGlobalDef = () => console.log(this.val);  // this === { val: 'global' }

const obj1 = {
  val: 'obj1',
  fMethod() { console.log(this.val); },
  ArrowFMethod() { (() => console.log(this.val))(); },  // Arrow function's IIFE
  fGlobal: fGlobalDef,
  ArrowFGlobal: ArrowFGlobalDef
}

const obj2 = {
  val: 'obj2',
  fMethod() { console.log(this.val); },
  ArrowFMethod() { (() => console.log(this.val))(); },  // Arrow function's IIFE
  fGlobal: fGlobalDef,
  ArrowFGlobal: ArrowFGlobalDef
}

obj1.fMethod();       // obj1
obj1.ArrowFMethod();  // obj1
obj1.fGlobal();       // obj1
obj1.ArrowFGlobal();  // global

obj2.fMethod();       // obj2
obj2.ArrowFMethod();  // obj2
obj2.fGlobal();       // obj2
obj2.ArrowFGlobal();  // global

// fGlobalDef() の this は呼び出し元オブジェクトになるため
// obj1.fGlobal() の出力は「obj1」、obj2.fGlobal() の出力は「obj2」になる
// ArrowFGlobalDef() の this は定義時のスコープでのオブジェクトになるため
// obj1.ArrowFGlobal() と obj2.ArrowFGlobal() の出力はどちらも「global」になる

ちなみにこちらは未読だが、技術評論社『改訂新版 JavaScript 本格入門』も似たコンセプトの本だと思う。

TypeScript などの AltJS や Vue.js などのフレームワークも勉強したいが、とりあえず次は『CSS3 開発者ガイド 第 2 版』2CSS をお勉強します。


  1. Ethan Brown(2017)『初めてのJavaScript 第3版』武舎広幸・武舎るみ訳,オライリー・ジャパンhttps://www.oreilly.co.jp/books/9784873117836/

  2. Peter Gasston(2015)『CSS3開発者ガイド 第2版』牧野聡訳,オライリー・ジャパンhttps://www.oreilly.co.jp/books/9784873117256/