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In the Bluff (Ramón Riobóo)

詰まるところ、一般的な人にとってカードを当てるというのは非常に難しい事なのだ。それ以外の全ては枝葉である。

今回は Ramón Riobóo の『Thinking the Impossible』に収録されている「In the Bluff」というカードマジックについて。本書の一番最初に収録されている手順ですが、結局これが一番良かったかも知れません。ただこの本、今は入手しづらいかも知れませんが…。

本手順の現象を簡単に説明します。まず観客が 1 枚のカードを見て覚えます。別の観客がそのカードを少しずつ当てていき、最終的には完全に当ててしまいます。

本手順はレギュラーデック 1 組かつ準備なしで演じられ、カードの選ばせ方と当て方の 2 要素で構成されています。そしてそれぞれがこの手順以外にも応用可能です。

特にカードの選ばせ方については心理的策略が満載で非常に勉強になります。何を主たる動作にするか、観客のディレクションをどこにどのように向けるか、などについてのお手本のような手順になっています。具体的には、どのタイミングで何を話すか?どのタイミングで手を動かすか?どのタイミングでそれらを終えるか?また、その際の演者の態度はどうあるべきか?といった話です。

さらに、観客によるタネの推測を誤った方向にミスリードするレッドヘリングが巧妙で楽しいです。これはタマリッツの Neither Blind Nor Stupid やピット・ハートリングの Chaos にも似た感じがあります。ただし、ここでの選ばせ方は巧妙ですがやや込み入っており、マジシャン向けという感も多少あります。なので、ノンマジシャン相手に演じる際は別の選ばせ方を採用するのも良いかも知れません。1

当て方も観客に当てさせるという点が独特で面白い上に、説明できないトリック的な柔軟性と楽しさも兼ね備えています。さらに、個人的に大好きな某技法を使ったはったり感も大変好みです。

ということで、この手順を読むためだけでも本書を手に入れる価値はあると思います。おすすめです!


  1. マジックをノンマジシャン相手に演じる場合とマジシャン相手に演じる場合について、演目や演じ方をどのように変えるべきか、あるいは変える必要はないのか、などについては別の機会に論じてみたいと思います。