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Paper Work (Asi Wind)

今回は Asi Wind(アシ・ウィンド)のレクチャーノート『Paper Work(ペーパー・ワーク)』1 について。日本語訳がマジックランドから出ており、現在、以下のサイトで購入可能。

3-D Telepathy(3-D テレパシー)

3 人の観客に小さな紙を渡して、そこに情報を書いてもらいます。それぞれの紙は折りたたまれてよく混ぜられてしまいます。観客のうちの 1 人が自由に 1 枚の紙片を選び、残りの紙片は破ってしまいます(1 つは演者が破り、もう 1 つは観客が破きます)。演者は残った 1 つに書かれている情報を正確に読み取ってしまいます。他の観客から、何を書いたのか演者が尋ねられた時に、他の 2 枚の紙片に書かれたことも正確に読み取ってしまうのです。

個人的に本レクチャーノートで一番のお気に入り。本手順はいわゆるセンターテアだが、紙を 3 枚に増やし、選ばれなかった 2 枚を破るという流れになっている。これによりセンターテアに紙を破る理由を与えている点も素晴らしいが、複数の手法を組み合わせることで非常に追いにくくなっているところが巧妙。また、Pit Hartling の「Inducing Challenges」の実践例としても見事。選ばれた 1 枚の紙を読み取り、トリックが終わったと思わせた状態で、オフビートを利用して裏の仕事を実行しながら観客の挑戦を誘う。

演じてみたいが肝心のセンターテアのやり方が分からない。何で学ぶのが良いんでしょうか?

Double-digit Riffle Force(二桁のリフル・フォース)

デックの表を観客に向けてリフルします。そこで見えたカードの数字を 2 つ選んでもらいます。その 2 つの数字は演者がフォースした数字になります。この方法の面白い所は、その前にデックをリフルした場合にばらばらの数字が実際に見えるので、フォースした相手にも他の観客にも非常にフェアに見える事です。

似た方法は見たことがあるが、このフォースは一度のリフルで 2 枚のカード(というか数字)を覚えさせることができる点が特徴。ただ、手法自体の目新しさはあまり無いかも知れない。用途は違うが似た原理でもっと面白いリフルフォースがあり、それは本当に感動した。

Noah(ノア)

この手順の前半 2 段では、適当に選ばれた 2 枚のカードの色と数字が一致します。そして 3 段目では 3 枚のカードが適当に選ばれた後、表向きの状態でデックに戻したら混ぜてしまいます。偶然にも、表向きのカードのすぐ隣のカードがメイトのカードになっています。手順中、デックをしっかりと混ぜているのですが、全てのカードはメイトで隣同士になっています。

本書の目玉となるトリックで、現象は Matching Routine。徐々に現象の強度を上げていく 3 段+クライマックスという構成で、特にクライマックスの解決法はこのプロットの正解に思える。同様の手法は過去に無かったのだろうか?だとしたらこれは凄い。

第 2 段では、実際に起こっていることと、観客の頭の中で起こっていることを微妙に食い違わせるためのサトルティが使われており、これが非常に好み。マジックってこういうことだよ!と言いたくなってしまう。

唯一気になるのは観客がデックをシャッフルできない点。デック全体が特定のオーダーに揃うトリックでは、どこかで観客にデックを混ぜさせたい。より正確には、観客がデックを混ぜたという印象を残しておきたい。例えば、デック全体での Oil & Water では、観客にデックを混ぜさせるという手法がよく使われる。勿論、Matching Routine で混ぜさせる方がデックのオーダー的に難易度は高いが、どうにか観客が混ぜた印象だけでも与えられないだろうか…。

一応、本手順では、第 2 段で観客にしばらくデックを操作させるため、演者がずっとデックをコントロールしていた印象を若干打ち消している。これで、観客がデックを混ぜられないという弱点をカバーしているかも。

著者自身も発展途上であると書いているため、今後の発展に期待したい。勿論、現時点で素晴らしいトリックであることには違いないが。

ちなみに、観客の前で本手順のセットアップを行う方法も解説されているが、これはそれなりに頑張る必要がある。ただ、混ぜられたデック 1 組で臨機応変に手順を繋げ、次の手順の準備をしていくスキルは非常に重要だと思うので、Noah のセットアップに限らず練習したい。

Gang of Four(4 人の仲間)

演者はデックを裏向きの状態でテーブルにリボンスプレッドし、デックのトップ側から 1 枚ずつ表向きにしてテーブルに置いていきます。ここではスペードの 10 でストップがかかったとします。スペードの 10 を表向きでデックのトップに乗せてそこまでに表向きにしたカードは、裏向きにしてスペードの 10 の上に重ねてしまいます。デックを揃えておまじないをかけスプレッドすると 4 枚の 10 が表向きになっています。

DVD『Que Raro』に Dani DaOrtiz の『Twin Souls』という手順が収録されている。これは良い手順だが、観客の前でセットアップするのが難しいところがあった。Gang of Four ではトリックの中でセットアップを行い、Twin Souls に繋げることができる。このセットアップ方法は Twin Souls 以外にも応用が効きそう。

『Que Raro』では、観客の前でセットアップする方法を Dani が解説しているが、あまりにも直接的で笑う。Christian の方法は良い感じだが、Asi の方法がよりスマートだと思う。やはり手順の中でセットアップしてしまうのは良い。

なお、本レクチャーノートではフォースのアウトが解説されていない。この辺りを学ぶなら『Que Raro』・『Utopia』辺りの DVD を見ると良いだろう。『Que Raro』では、Twin Souls に続けて演じるトリックのアイデアを Dani が話しており、これも面白いので見てない人は是非。

P.S.

紙のレクチャーノートとか DVD とかいい加減やめたい。


  1. Asi Wind(アシ・ウィンド)(2019)『Paper Work(ペーパー・ワーク)』小林洋介訳.マジックランド.