Blufflog

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死画像

これは傑作。この記事は読まなくて良いのですぐに観てください。
2015 年にアムモ 98 が出したオリジナルビデオで、本編はこちらなどで観られます。

1. 錯死霊

廃校になった母校の美術室に忍び込む男たち。そこにあったのは、ある生徒が死の直前に描いたという絵…。

映像作品における幽霊描写の試み。あまり怖くはないが。

2. 死の報告者

大学の自主映画サークルの会合に、いきなり侵入してきた見知らぬ男。彼はいったい何者なのか…。

これもあまり怖くない。死の瞬間の描き方で少しおっ、と思ったが、後で白石晃士作品1を観ると同じ演出があったので特に新しくはない。というかよくある演出なのかも。

3. 霊感テスト

廃墟で拾ったボロボロのVHSテープ。そこに映るのは、一見何の変哲もない映像に思えたのだが…。

呪いのビデオ系の正統派良作。『リング』の呪いのビデオより怖いかも。

4. 歌声

毎晩同じ時間に、歌を口ずさみながら住宅街を歩く中年男性。彼を驚かせようと、後を尾けてみると…

この手のB級ホラーVシネの楽しみ方として、ツッコミを入れながら観るというのがあると思うが、この作品では制作スタッフ自らがセルフツッコミを入れる。しかもこのツッコミがわりと面白い。

5. 貫通

買ったばかりのビデオカメラで同棲中の恋人を撮影していると、突然の停電。復旧後に映ったものは…。

『死画像』の中では最もオーソドックスな作品だと思う。次の超前衛的な『クニコ』の前というのが良い位置。微エロ要素あり。

6. クニコ

少女の自殺を伝えるニュース映像。それを観た者にふりかかるのは、世にも恐ろしい究極の呪いだった…。

これはやばい。今まで観た中でもトップクラスに怖い。とにかく予想外の展開・演出に自分は三度驚かされた。新感覚の地獄の恐怖体験。

本作の特徴として、VHSビデオテープという媒体の怖さを究極に表現しているというところがある。
録画の繰り返しよるノイズ・一瞬映る、上書き前に録画されていた映像・録画映像が終わった後の永遠に続くかのような青い画面。
こういったものに不気味さを感じた経験のある人は間違いなく恐怖を感じる。逆にこの感覚が分からない、あるいはそもそもVHSを知らない、という人には伝わりにくい怖さかも知れない。

呪いのVHSというのは表面的な演出だが、本作の本質的な恐怖演出は、他に観たことが無い方向に振り切っていて斬新。
正直、アイデア一発で初見殺しだが、二度と見返したくないと思えるようになっているので、初見殺しでも問題無いし、一度観たら一生忘れられない強烈さがある。

P.S.

全編を通して面白いアイデアを試みており、クニコで(事故的に?)完全にハマってしまった怪作。超怖い。やばい。
なお、各話あらすじは公式サイトから引用しました。


  1. Kōji Shiraishi. Occult. Japan: 2009.
    Kōji Shiraishi. 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01【口裂け女捕獲作戦】. Japan: 2012.

ふたりはプリキュア

  • プリキュアは世界の平和のために戦うのかと思っていたら違った。プリキュアは、自分や、自分の大切な人のために戦う。非常に自分主義的で良い。主人公が戦う女の子という点も相まって更に良い。プリキュアが本気になるのはいつも、自分の大切な人が傷付けられたとき
  • OPのアニメーションが良い。なぎさとほのかが出会う前から、8話を通して結束し、敵に立ち向かうまでの本編のストーリーが集約されている
  • EDの歌詞が良い。プリキュアの自分主義的な思想を反映していて良い。世界の平和を守ることより、チョコパフェとイケメンが大事という絶対的真理
  • プリキュアの衣装が超良い
  • 有名な8話はやはり最高
  • 8話以外のストーリーは退屈なことが多い
  • 単純な作品の完成度としては、「1-8話 + 残りを5話分に圧縮」で1クールの長さにすると丁度良さそう。でも、1年通してやるとキャラへの愛着がより湧くし、そもそも女児アニとしてはこの濃度でも良いと思う(もっと濃くても良いけど)

Roleplayer by Benjamin Earl

数日前に発売されたBenjamin Earlの電子書籍『Roleplayer』のレビューです。
本人のサイトで購入できます。
https://www.benjaminearl.com/product-page/roleplayer

Roleplayerの現象は次の通り。

観客は好きなカードの名前を言った後、デックをシャッフルする。その後、観客自らがそのカードのフォーオブアカインドを見つけ出す。この間、演者はデックに手を触れない。

内容は、Roleplayer複数バージョンの手順解説と、そこで使える技法・理論解説。
最近のEarlらしく、手順はシンプル・ダイレクト・大胆な感じ。この手順の核は、タイトルにもなっている「roleplayer」の部分。

技法部分は様々なサトルティ・アイデアが書かれていて良い感じ。例えば複数枚のカルなど。この辺りは他のカードマジックにも応用しやすい。特に「Real Ace Cutting」とか。

理論部分は、演者の態度や観客の記憶コントロールについて。
リアルな体験を観客に提供するには、観客の記憶をコントロールする必要がある。そのために演者はどのような態度を取り、どこに注意を向けさせるべきか?といった内容。

また彼は、観客に少しも疑いを持たせないことを徹底していて、スライト・原理・ギミックの気配を感じさせる手法を排除している。その結果、使える手法は限られてくるようで、いつも同じようなスライトや原理を使ってる印象がある(C-C-Forceとか…)。ちょっと特定の技法を信頼し過ぎではないかと思わなくもないが、技法そのものだけでなく、態度や心理テクニック等でカバーするということだろう。

彼のマジック全てに通じるが、徹底的に観客目線でマジックを作っているのが良い。実際に上手く機能するかという点は難しいが、個人的にはある程度上手くいきそうに思う。少なくとも方向性は正しいと思う。

全体としていつもの彼らしい感じなので、ものすごく目新しい部分などは無い。『Less Is More』辺りを読んでいると冗長に感じる部分も多い。
ただ、彼のマジックが好きなら間違いなく面白いだろうし、特に技法部分のサトルティは応用しやすく勉強になる。
お勧めです。

へレディタリー/継承(映画公開前)

先日、Filmarks の試写会で『へレディタリー/継承』を観た。
(Ari Aster. Hereditary. United States: 2018.)

原則このブログではネタバレを一切考慮していない。しかし現時点で本作は一般公開前なので内容には触れずに、Filmarks に書いたレビューのリンクを貼っておく。

へレディタリー/継承のharuのネタバレレビュー・ 内容・結末 | Filmarks映画

とにかく本当に怖いので絶対に観るべき!
個人的には、『回転』・『エクソシスト』・『呪怨』などと並ぶレベルの映画史に残る傑作ホラーだと思う。

勝ち組・負け組

例えば就活で、「Aという企業に入ったら勝ち組で、Bという企業に入ったら負け組だ」というようなことは存在しない。

人生において勝ち負けは無いし、あるとしたら人間は全員死ぬので全員負け。

自分は中学生の頃から、「人は皆必ず死ぬ」ということに非常に自覚的だったので、ずっとこう思ってきた。
ちなみに、人間の死に自覚的になったきっかけは、山口 雅也の『生ける屍の死』1という小説を読んだこと。
自分はこの小説の影響を本当に強く受けていて、好きな映画のジャンルがホラーと恋愛であることにも関係している。


  1. Masaya Yamaguchi. Death of the Living Dead. Japan: October 1989.

Eric Chien FISM Act: First Impression

FISM 2018 クロースアップ・グランプリ Eric ChienのFISMアクトを観たので、初見の印象を書いておく。
観てみて、取り敢えず面白かった。ただ、すごく好きかというとそうでもない。
自分の好みではなかったというだけなので、このアクトを批判するものではないです。

動画はこちら。

現象

演者が白いリボンをテーブルの中央に置く。すると、リボンの左右でカードの色が変化したり、カードがコインに、コインがカードに変化したりする。このアクトで凄いのは、この変化現象が非常にビジュアルに起きるところ。
この、リボンの左右でカードが変化するというのは、Helder GuimarãesのInvisible Threadを思い出させる。これは、見えない糸という演出を用いたFollow the Leader風のリセットで、非常に巧く構築された名作だ。
また、このアクトはLennart Greenの影響が強い。Greenはカードを左右交互に配っていくと赤黒に分かれるというマジックを(レギュラーデックで!)やっており、ここで用いられる彼の代表的なテクニックは、Eric Chienのアクトでも使われている。

気になった点

マジックの個人的な好みとして、実際に使われる手法と、現象から想起される手法とが乖離している方が好き、というのがある。例えば、スライトを使った場合はギミック的な現象に見え、ギミックを使った場合はスライト的な現象に見えるのが好み。どこでどんな手法を使ったのかが分からず、不思議さが増すと思う。1
この点で今回のアクトは、スライトっぽい所とギミックっぽい所がはっきりしているように見え、あまり好きではなかった。悪い意味で直接的過ぎるというか、ギミックやスライトを順番に見せられているだけに感じてしまう。これはShin LimのFISMアクトでも感じたが。

他に気になったのが、ラッピング。このアクトのように、テーブルを使い、座った演技を見ると、自分のような馬鹿でもラッピングという手法を想起する。
となると、ラッピングを考慮しても不思議に感じるくらい強烈なことを起こして欲しい。Tony SlydiniやYann Frischはこれがよくできていると思う。
Eric Chienのアクトはそこまでのレベルには感じず、ラッピングを使ってうまいことやったんだろうなー、くらいの印象にしかならなかった。

演出・現象的にも、先程述べた通り、HelderやGreenを筆頭に既存な感じが強いので、目新しさは感じなかった。

Conclusion

初見の印象なのでいずれ変わるかも知れない。
何はともあれ、FISMグランプリのアクトを観られて本当に良かった。FISMの映像は放送や販売するなどして欲しい。


  1. Lennart GreenのFISM失格エピソードみたいな状況が最強だと思う。あとは、絶対にレギュラーデックだと思い込ませるために、何日も前から仕込んでおくとか。