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脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦(渡辺 正峰)

渡辺 正峰著『脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦』1 を読んだので、今回はその感想を書いてみる。
意識のアップロード!(意識の機械への移植)というサイバーパンク的な内容に釣られて読んだが、意識研究を中心とした脳科学の歩みについて概観できてシンプルに勉強になった。

自然現象など客観的に観察できる事象を主な研究対象とする科学において、意識という主観的でとらえどころのないものに対してどのような科学的アプローチで研究をするのか検討もつかなかったが、両眼視野闘争や錯視的なあれこれを利用して意識に迫っていくのが面白かった。

ヒーリング・グリッド錯視のように、脳が意識に見せる仮想現実(クオリア)において脳内補正が空間方向に効くことは知っていた。しかし、触覚ラビット錯覚(Cutaneous Rabbit Illusion: CRI)のように、脳内補正が時間方向にも効いていることは初耳で興味深かった。

本書を読む限りの感想として、リベットの実験その他から推測するに、やはり自由意志は存在しなさそう。少なくとも、我々の意志があるとしてもそれはかなり限定的なもので、真に自由な意志が存在することを主張するのは難しそうに思えた。
自由意志の不確かさに関連して、選択盲の話は興味深い。自分はどうしてもマジックにおける「フリーチョイス」に引き付けて考えてしまった。

後半、統合情報理論を支える情報量(シャノンの情報理論的な話)の理論や、意識の正体として著者が推している「生成モデル」に関してニューラルネットワークディープラーニングなどの話がほぼいきなり登場する。情報系のバックグラウンドを持つ自分にとってはある程度馴染みある話だが、馴染みの薄い読者はやや困惑する部分かも知れない。

なお、脳と意識についてのライトな文献としては『Newtonライト 脳といしき』が良いかも知れない。ニューロン間の情報伝達の原理・両眼視野闘争・リベットの実験など、主要なトピックについて広く浅くカバーしている。1, 2時間程度で読めると思う。

P.S.

  • 勿論、自分は脳科学関連について素人だし、本書はチェックの厳しい教科書などでなくあくまで新書だ。よって、ここに書いてある内容の信憑性については盲信せず注意しておきたい
  • 「意識の機械への移植」と「不死」は密接な関係があるため、本記事を Death カテゴリーに入れている

  1. 渡辺正峰.脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦.中央公論新社,2017,336p.,ISBN978-4-12-102460-2,https://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/11/102460.html