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Unreal Card Magic by Benjamin Earl - 3. Technique

いよいよ本格的な技法編です。はっきり言って入門の域を遥かに超える内容も含まれているので、すべての技法を習得する必要はないと思います。実際、自分もワンハンドボトムパームなどはまったくできません。

The Selection

カードの選ばせ方や戻し方について。カードの選ばせ方としては、手の中でスプレッドしたカードの中から 1 枚を引いてもらうのがもっとも一般的だと思いますが、選ばせ方には他にも種類があります。よって、状況に応じて適切な選ばせ方を選択することが大事になってきます。選ばせ方毎に観客の感じるフリーチョイス感(公平感)が異なるので、できるだけフリーチョイス感の強い選ばせ方を選択するのが基本でしょう。また、カードの選ばせ方と戻してもらい方に一貫性をもたせることで演技が自然になります。この辺りのことはカードカレッジにも書かれていた気がします。

Break Management

ブレイクの管理について。細かい要素ですが技法の気配を消すために非常に重要です。個人的に Earl は Break Management がかなり上手いと思います。

Fingertip Peek

フィンガーチップピーク(ピークコントロール)について。Earl は以前から多用していますし、個人的にも大好きな技法です。テーブル等が不要でいつでも使えますし、観客は 1 枚のカードを引かずに見るだけというのがすごく使いやすいです。Dani DaOrtiz 的な心理操作にも繋げやすくオススメです。

Mahatma Shuffle

マハトマシャッフル。個人的には直接的すぎてあまり好きではありませんが、技法前のスローオフ(気配消し)がうまくいっていれば有用だと思います。しかしそれは初心者には難しいのでは…。

The Classic Pass

クラシックパス。Earl のパスの考え方は自分の考えにも近く、納得のいくものでした。物理的に見えないパスではなく、心理的に見えないパスを目指すのがよいと思います。

The Cull

ホフジンサースプレッドカル。コントロール以外にもさまざまな使い途のある便利技法なので確実に習得しましょう。

Overhand Stock Controlls

オーバーハンドシャッフルストックコントロール。オーバーハンドシャッフルしながら、トップまたはボトム数枚のカードの順序を維持する技法です。

Riffle Shuffle Stock Controll

リフルシャッフルストックコントロール。さきほどのストックコントロールのリフルシャッフル版です。

In-The-Hands False Cuts

フォールススイングカット。テーブルが不要でフラリッシュ的な動きでもないため、いつでも非常に使いやすいです。これも有用なので是非習得しましょう。

The Double Thundercut

ダブルサンダーカット。ンダーカットの間違いではありません。3 分割のスイングカットを実行しながらある操作を密かに達成するための技法です。地味に便利そうです。

Real Optical Shuffle

リアルオプティカルシャッフル。オーバーハンドシャッフルでフルデックのフォールスシャッフルです。いい技法ですが、個人的には同じく Earl の The Combination Shuffle の方が複合的で好きです。

The Top Palm

トップパーム。いわゆる Vernon の Topping the Deck です。ちなみに Earl はこの技法をアードネスにクレジットしていますが…。解説の内容は普通にいいです。

One Handed Bottom Palm

ワンハンドボトムパーム。Earl が最初にリリースしたビデオ『パスト・ミッドナイト』最初のトリックで衝撃を与えた技法です。うますぎ、むずすぎですが、習得すれば気配なしで奇跡を起こせます。

Palm To Palm Transfer

パームトゥパームトランスファー

The Palm Switch

パームスイッチ。パームを使って 2 枚のカードを密かにすり替える技法です。非常に直接的で、Earl の実演を見ても個人的にはやや無理があると思っています…。やはり技法と現象の距離は色々な意味で離れていて欲しい派です。

The Tip-Over Switch

チップオーバースイッチ。非常に自然で有用な技法です。この技法を使える文脈は限られますが、使う文脈さえ間違えなければ最高の技法です。

The Push-Off Double Lift

プッシュオフダブルターンオーバー。自分の知る限り Earl がこの技法を解説するのはここがはじめてという気がします(違ったらごめんなさい)。この技法の習得を本気で目指す人にとっては、Earl の映像を何度も見られるのでそれだけでも買いだと思います。正直、これよりずっといいです…。

プッシュオフの方法だけでなく一般に使えるアイソレーションの理論も解説されます。特に目新しい話ではないものの、知らない人は必見の理論です。

また、プッシュオフを使わず安全にターンオーバーする方法も解説されています。これはすごくいい技法ではないものの、最低限のラインとしては十分だと思います。ちなみにこの方法は次の Elliott Terral のレクチャービデオでも解説されていました。一般人はプッシュオフを頑張らずに Terral のビデオで解説されている方法を習得すれば十分だと思います(自分がそうです…)。

The Top Change

トップチェンジ。スタンダードな方法だと思います。

Broken Top Change という手法が好きです。ちなみに DaOrtiz もほぼ同じことをやっています。

The Riffle Force

リフルフォース。テーブル等が不要でいつでも使えて、(ほぼ)確実に成功するフォースとして紹介されています。実際、自分もそのとおりだと思います。ただ、解説がややあっさり目なので、より詳しく知りたい場合は同じく Earl の『The Shift #2』を参照するのがよいでしょう。

The Cross Cut Force

ロスカットフォース(クリスクロスフォース)。マジシャンに軽視されがちなこの技法ですが、非常に有用です。演者がカードに触る必要がほぼないのはものすごい強みだと思います。より詳しいバリエーションなどは、同じく Earl の『Inside Out』を参照してください。

おわりに

次回からはいよいよトリックをレビューしていきます。

Unreal Card Magic by Benjamin Earl - 2. Basic Handling

今回は Benjamin Earl『Unreal Card Magic』内の Basic Handling というセクションをレビューします。

こちらはマジックではなくカード自体の基本的な扱い方の解説です。これはマジックを成り立たせる技法を学ぶ土台になる要素で、一見地味ですが非常に重要です。類似のコンセプトとしては、Dan and Dave『The Trilogy』内の Flourishes 101 や、同じく Dan and Dave による Card Magic Basics などがあります。

Earl と Dan and Dave のどちらもスキルレベルがトップクラスなので、初心者のみならず上級者にも有用な教材だと思います。

書籍で学ぶならやはり『カード・カレッジ』が鉄板でしょう。

Grips

カニックグリップ(ディーリングポジション)とビドルグリップ(エンドグリップ)の解説。強いていえばメカニックグリップの派生形の解説が注目点だと思いますが、そこまで目新しい内容はありません。

Riffles

リフルの解説。初心者向けの解説でリフルは抜けてしまいそうな気もしますが、多くの技法の基礎となるため意外と大事だと思いました。内容は普通です。

Spreads

手の中でのスプレッドの解説。スプリングの解説もあり、スプリングは親指以外の指先でリフルする古典的な方法と、親指でリフルする現代的な方法の 2 種類が解説されています。当然ながら Earl は後者の現代スプリング(?)推しでした。見た目も音もこちらの方がいいですよね。

Squareing

デックの揃え方の解説。個人的には、デックの揃え方を見るとその人のカードの扱いの習熟度をある程度測れる気がしています。何も考えずにデックを揃えようとすると指先がバタついて不格好なので、素早く合理的で一貫性を持った動きでデックを揃えるときれいです。また、デックを揃える動きの中でシークレットムーブをすることも多いので意外と重要なテクニックです。

デックの揃え方はカード・カレッジで解説されているものと基本的には同じですが、より上級者向けに超高速で揃える方法が解説されているのでここが注目点でしょう。

Shaffling

シャッフルの解説。オーバーハンドシャッフルとリフルシャッフル。ディーリングポジションからオーバーハンドシャッフルのポジションに素早く移行する方法が注目点です。

Cuts

カットの解説。特筆すべき点はありません。

Turnovers

カードの表返し方の解説。後々非常に重要になります。普通に 1 枚のカードをひっくり返す方法を丁寧に解説した教材は貴重だと思います。ちなみにこちらのレクチャービデオもオススメです。

Simple Flourishes

基本的なフラリッシュの解説。
ピルエット、サムファン(片手閉じ含む)、Airing/Squeezing the Deck。

Earl はサムファンを親指でなく人差し指で広げる派でした。ちなみに自分も人差し指派です。エンドグリップの状態からそのままファンできるから便利なんですよね。

Airing/Squeezing the Deck の説明は難しいですが、カードを飛ばさずに手の中でゆっくりスプリングするようなフラリッシュです。『Past Midnight』の頃からやっていた気がします。

Fluidity and Transitions

忘れました。
技法感の繋ぎを滑らかにする話とかだったでしょうか。重要そうですね。

おわりに

次回は Technique セクションをレビューする予定です。

Unreal Card Magic by Benjamin Earl - 1

Benjamin Earl(ベンジャミン・アール、Ben Earl)のレクチャービデオ『Unreal Card Magic (UCM)』を何回かに分けてレビューしていきます。

概要

UCM は、レクチャービデオを中心としたカードマジック入門セットです(対象年齢 12 歳以上らしいです)。マジック初心者が地球上で最高のカードマジックを演じられるようにするための最短距離を提供する、といったようなことが銘打たれています(本当!?)。

背景

UCM は元々、Earl 率いる Studio52 とマジックショップ Ellusionist が共同で立ち上げたプロジェクトで、Kickstarter にてクラウドファンディングが実施されました。このファンディングは成功し、自分を含む出資者には先行で UCM が発送されました。現在は Ellusionist で一般販売されています。

余談ですが、仮に今回のファンディングが失敗していたとしても、Ellusionist は自社の資金で UCM をリリースできていたような気がします。そのため、クラウドファンディングが資金集めというより広告宣伝の手段として使われていたのではという気がしなくもありません(邪推)。

内容

  • UCM レクチャービデオ(ダウンロード、ストリーミング)
  • A custom Unreal Card Magic art piece (a real conversation starter)
    • 木製の手(デックを持たせて飾ることが可能)
    • 木製の箱(2 デックを収納可能)
  • 2 x Premium decks of playing cards (these are the ones that Ben uses personally)
    • 限定版の(?)タリホーです。自分は未開封なので詳細は分かりません
  • WTF book(UCM レクチャービデオを補足するような小冊子)

現時点での全体的な雑感

基本的には Earl のメンバーシップである The Family など、近年 Earl がリリースした媒体で解説されているものと被っており、ざっくり言うと The Family からの抜粋という印象です。

しかし、The Family はサブスクであり毎月課金が必要ですが、UCM は買い切り型の商品という違いがあります。近年の Earl 作品をまとめて知るには書籍『Inside Out』と並んでオススメできそうです。

UCM はカードマジック入門キットなので一応、初心者向けということになっています。では本当に初心者にオススメかというと、個人的にはオススメですが、一般的にはオススメできません。個人的には最初からトップクラスのものを見ていくスタイルが好きなのですが、一般論としては、必ずしも最高とはいえないとしても簡単なものから段階を踏んで上達していくスタイルが基本でしょう。まともな入門教材であれば、基礎技法として One Handed Bottom Palm や The Push-Off Double Lift などは解説しないと思います…。

おわりに

次回は UCM レクチャービデオの Basic Handling というセクションをレビューする予定です。

今さら!フランク・ダラボン監督作『ミスト』(2007)を語る!

超個人的見解です。

怪物たちが活躍し人間たちは右往左往する途中までは、クトゥルー漂流教室的な雰囲気でとても楽しかったです。

しかし最後のアレは悪い意味で嫌でした。というのも、最後のアレは観客の意表を突き、厭な衝撃のラストを与えるためだけの仕掛けに感じたからです。穿った見方すぎるかも知れませんが、個人的には製作者の下心(?)のようなものを感じてしまいました。

作品全体が観客への嫌がらせを目的としているならそれはそれで全然いいと思います。しかし、途中までは怪物が活躍するホラー映画としての楽しさがかなりの部分を占めていながら最後にアレがあるというのは、どうにも食い合わせが悪いというか、最後のアレのためにホラー映画の楽しさが利用されているようで、悪い意味で不愉快に感じてしまったのです。

都市伝説・陰謀論・オカルト

都市伝説・陰謀論・オカルトなどについて、科学的・論理的な面をまるで無視した反知性的な態度は嫌なのですが、陰謀論などをエンタメとして消費したり、ネタとして楽しんだりするような「オトナな」態度もまた嫌なのです。

Any Object At Any Place (AOAAP)

観客 A に何か好きなものを言ってもらいます。例えば A が「リンゴを持った男性」と言ったとします。次に、観客 B にスマホGoogle マップを開いてもらい、縮尺を最小にしてもらいます。B は Google マップの世界地図画面を勢いよくスクロールし、スクロールの慣性による地図の動きが止まるのを画面を見ずに待ちます。地図の動きが止まったと確信できる程度待った後に、B は画面を見ないまま好きな位置をタップし、その場所をピン留めします。その場所が海上のように何もない場所、あるいは Google ストリートビュー撮影車が立ち入れない地域などだった場合は、地図のスクロールからやり直してもらいます。別案として、B が -90 から 90 の間と -180 から 180 の間で好きな数字をそれぞれ 1 つずつ言い、その数字を座標として Google マップに打ち込む、といった方法も考えられます。

以上の結果、A が自由に指定した何か(リンゴを持った男性)と、B が自由に指定した場所という 2 つの情報が得られます。そして、B がピン留めした地点を中心にそのまま Google マップの縮尺を大きくしていきます。ストリートビューを見ると、ピン留めしたまさにその場所で「リンゴを持った男性」を発見します。

…といった現象を考えたので、このプロブレム(現象)を解決する方法を思いついた方はこっそり教えてください。よろしくお願いします。
また、考えたと書きつつも妙に既視感があり、何かで読んだのを無意識的に思い出しているだけかもしれません。既にあるという場合もこっそり教えていただけると助かります。こちらもよろしくお願いします。

P.S.

令和のホフジンサーを目指したい。