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The Challenge

マジックの本やビデオをレビューするのは少し重いので、トリック単体を紹介する記事を不定期で書いていこうと思う。

今回はDai Vernonの『The Challenge』。この作品はLewis Gansonの『The Dai Vernon Book of Magic』1に収録されている。

現象

演者は2枚のカードを観客に見せる。観客はその内の1枚を心の中で決めるが、演者はそれを当ててしまう。当たる確率は1/2なので観客はまぐれだと思うが、これが何度か繰り返される。しかもこの間、演者は観客に一切質問しない。そして最後に意外な結末で演技を終える。

解説の中で特に面白かった箇所を要約して引用する。

普段カードマジックに熱心ではない人々でさえ、このトリックを高く評価する。恐らくそれは、カード(トランプ)が、たまたまそこにあったからという理由だけで使われており、他の物を使っても良かったように思えるからだ。

つまりこの作品は、「カードマジック」という枠組みを観客に意識させない効果がある。

演者が「これからカード(を使った)マジックをします」と観客に明示的、あるいは暗黙的に示してからマジックを始めると、観客は「(カード)マジック」や「マジシャン」といった既知の概念を念頭に置いた状態でマジックを見ることになる。これが必ずしも悪いこととは思わないが、個人的には、観客にこういった先入観を持たせずにマジックを見せたいと思っている。この点において、本作のアプローチは面白い。

また本作は、カードマジック的な手法の面でも面白い。手法自体はよくあるものだが、このような現象に昇華させている点は独創的。

1/2のカード当てという地味な現象ながら、繰り返しで効果を強め、最後にはクライマックスの現象もある。この一連の現象が手法とうまく結び付いており、傑作だと思う。


  1. Lewis Ganson. The Dai Vernon Book of Magic. 1956.